働き損はしたくない!扶養内パートはこれからどうなる?「年収の壁」をFPが解説!

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今、世間を騒がせている扶養内パートの「年収の壁」。「たまひよ」アプリユーザーで扶養内パート(予定を含む)のママからは「わからないことが多すぎる!」という声であふれました。1級FP技能士の前田菜穂子さんに聞きました。
扶養内で働く理由は「壁の恩恵を受けながら無理せず働きたい」
Q【扶養内で働いている方・今後、扶養内で働く予定の方に伺います】扶養内で働く理由は何ですか?
と、「たまひよ」アプリユーザーに質問してみました。結果は以下のようになりました。
子育てを優先させたいから 54.8%
時間・体力的にちょうどいいから 17.8%
税金・社会保険料の支払いをしたくないから 17.8%
その他 6.8%
経済的な理由、というより働くことが好きだから 2.7%
「子育てを優先させたいから」「時間・体力的にちょうどいいから」が合わせて72.6%。
「(扶養を外れて)働く時間を伸ばすとしたら、子どもの送り迎えや習い事の調整もいるなと悩みます」(ゆずまる)
共働きが増え、日本でも父親の育児参加が高まっているとはいえ、まだ家事・育児は母が多くを担っている現実が大きく影響しているようです。続きを読む -
約8割が「壁が変更されても、とりあえず今の職場で働く」
Q.2024年10月から社会保険の適用範囲が拡大され、今後も年収106万円(130万円)の壁が変更されると言われています。変更後は、どのような選択をする予定ですか?
という質問では以下の結果になりました。(※アンケートは2024年10月実施)
わからない・まだ何も考えていない 56.4%
時給の良い職場に転職して、働き損のない年収を目指す 15.4%
手取りは減るけれど、今のまま続ける 10.3%
今の職場でもっと働き、働き損のない年収を目指す 10.3%
フルタイムの正社員を目指す 3.8%
専業主婦になる 2.6%
その他 1.3%
「わからない・まだ何も考えていない」「手取りは減るけれど、今のまま続ける」「今の職場でもっと働き、働き損のない年収を目指す」という、「とりあえず今の職場に残る」という人は77%。
「時給の良い職場に転職して、働き損のない年収を目指す」「フルタイムの正社員を目指す」として、転職を考える人は19.2%と、少数派でした。そしてコメントでは、
「わからないことが多すぎて不安」(まい)
「いまだによくわかっていない」(奈っ茶。)
という声が目立ちました。
実はこのアンケートの実施は2024年10月の衆議院選挙の前でした。
選挙後に大いに論議されているのが103万円の壁。
106万円(130万円)とはどう違うの?と思われる方も多いはず。
そこでライフスタイルアドバイザーで1級FP技能士の前田菜穂子さんに聞きました。「“年収の壁”には、税金(夫または妻)、社会保険料(妻自身が払うもの)と2種類あることを知ろう」と、前田先生
一般的には、年収の壁は100万円、103万円、106万円、130万円、150万円、201万円があります。
多いですね(笑)
この時点で、読む気を失っている方も多いかもしれません。
扶養内パートを続けるか、それとも扶養を外れて働くか、多くの方が迷われています。
「そもそも税金や保険料がどう関わってくるのかよく分からない」という扶養内パートさんは、以下の3つを注視しましょう。
103万円の壁…税金がかからない壁。これを超えると所得税が発生する。
106万円の壁…社会保険加入の対象となる壁(従業員51人以上)。保険料負担が発生するが保障が手厚い。
130万円の壁…社会保険扶養から外れる壁。夫の扶養から外れ保険料が全額自己負担になる。(106万円との違いはのちほど)
今回は所得税の103万円の壁と、2024年10月から対象者が増えた社会保険料の106万円(130万円)の壁にポイントを絞ってお話します。続きを読む -
年収の壁を見極める2つの重要ポイント
年収の壁で重要なのは、
・壁は税金、社会保険料と2種類ある
・壁によって利益を得るのは妻の場合と夫の場合の2種類ある
ということを覚えておいてください。続きを読む -
●給与収入103・150・201万円は所得税の壁
税金の壁の説明の前に、まずは「収入」と「所得」の違いを理解しておきましょう。
「収入」-「必要経費」=「所得」です。
所得=手取りではありません。税金を計算するための紙の上に表れてくる言葉と考えた方が「壁問題」は理解しやすくなります。
給与収入が103万円以内なら、103万円分の控除(給与所得控除55万円+基礎控除48万円)があるので所得税は発生しません。103万円を超えるとパートの所得税が発生します。
国民民主党が「178万円に引き上げる」と、主張している壁です。
※令和7年に103万円の壁から123万円の壁とすべく第217回国会にて審議中です。(令和7年3月4日現在)
会社からお給料をもらっている扶養内パートさんの場合は、額面が「収入」、給与明細には“総支給額”と記載されています。国が決めた「給料をもらう際の経費が“給与所得控除”※1」です。
給与収入が年間162万5000円までは55万円を「必要経費」として給与収入から引き算(=給与所得控除)でき、その数字がパートさんの「所得」になります。
この「所得」が48万円以内なら夫側の税金計算を安くする「配偶者控除」が行われ、48万円を超えても133万円以下であれば「配偶者特別控除」が行われます。
配偶者特別控除の最低ゾーンは妻の「所得」が48万円超95万円以下、「収入」に換算すると150万円(給与所得控除55万円+所得95万円)です。201万円は夫が配偶者特別控除を受けられる妻側の上限の「収入」です。
つまり150万円と201万円の壁は、夫の手取りが増える壁となります。
メリット額は控除額×税率で計算されるため、「壁」の前後での金額差はそれほど大きくはなりません。なお、夫側の所得は1000万円以下という条件があります。●年間収入106万円と130万円は、社会保険(年金・健康保険など)の壁
106万円と130万円の違いはざっくりですが、
年間収入106万円→パートをしている会社の従業員が51人以上だとパート先の会社の保険に入るボーダーライン。パート妻自身が勤め先と折半で社会保険料を払うことで夫の社会保険の扶養でなくなります。
年間収入130万円→夫の会社の社会保険の扶養から外れなければならないボーダーライン。106万円のように勤め先で社会保険に入れない場合は、負担額が大きくなる国民年金・国民健康保険加入となる要注意金額です。
(106万円は通勤手当、賞与などは含まないけれど、130万円は通勤手当など全部含むなど細かな基準があります。詳しくは※2を参照)
どちらも社会保険料を支払うので手取りは減ります。これがいわゆる「働き損」と言われる部分です。続きを読む -
106(130)万円以上稼いだら、本当に働き損なのか?
「106(130)万円以上働いても損ではない」という専門家の意見をよく聞きます。
確かに手取りは減りますが、会社の保険に加入した場合、傷病手当金や出産手当金など保障が手厚くなり、老後にもらえる年金が増えます。保険料の半分は会社負担なので、健康保険と年金合わせて自己負担20万円程度で将来の安心が手に入ります。
ただ、パート先が厚生年金保険の加入義務がない場合や106万円での社会保険加入に該当しない場合、一般社員の就業時間の4分の3以上の労働契約になっていない場合に年収130万円以上稼ぐ※3と、今まで支払わずに済んでいた国民健康保険料と国民年金保険料を払うことになります。国民年金保険料だけでも年間約20万円。会社の保険料折半もなく、傷病手当金も出産手当金もなく、将来受け取る年金も増えません。
このほかにも夫の会社独自の配偶者手当などの有無によって、手取りの金額が変わります。
「いまだによくわかっていない」(奈っ茶。)
と、ママたちが感じることは致し方ないのです。
※3一時的な年収130万円であれば、妻の勤め先の所定の証明書が夫側の健保組合等で受け入れられることにより扶養でいられる制度があります。詳しくは下記リンクで続きを読む -
扶養内パートは今後どうなるの⁉どうしたらいいの?
盛んに議論されている「103万円を178万円へ上げて手取りを増やそう」は所得税の壁。でも106万円(130万円)の社会保険料の負担で手取りが減る問題については、対象者が増える方向性です。
実は106万円の基準のひとつ「パートをしている会社の従業員が51人以上」は、2024年9月までは101人以上でした。2016年の導入時は501人以上の大企業だけが対象でした。
「基本的には職場の意向に従う」(ほんし)
手取りを1円でも減らしたくない従業員がいる一方で、会社は従業員と折半する保険料の負担を避けようと、契約労働時間を減らして社会保険に入らせないケースも心配されています。
106万円の壁拡大は扶養内パートには改悪ととらえられますが、シングルマザー等でフルタイム勤務が難しい国保・国民年金加入者からすると、社保適用に積極的=従業員を大切にしている会社という見方もできます。
扶養内パートでいようとするならば、選択肢は
1:労働時間を減らす
2:社会保険の無い職場に転職する
の2択となります。でも労働時間を減せば「雇用保険から外れる」という自分の首を絞める結果につながる人も出てくるでしょう。雇用保険は(額面賃金の0.6~0.7%という)社会保険に比べるとはるかに低い保険料で失業等給付金や育児介護休業給付金等が用意されている、心強い保険です。
また転職するにも、それなりのパワーが必要です。
そもそも働いている時点で家計にはプラスです。今まで受けていた恩恵を失う痛みは共感しますが、ぜひ前向きにとらえていただきたいと思います。前田菜穂子
PROFILE)
みつめFP事務所代表で、1級FP技能士(国家資格)、CFP®(日本FP協会)、日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(平成29年10月~令和7年9月)、J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザー 、FPmamaFriendsおこづかい教室認定講師。猛烈に働いた13年間の会社員生活での挫折や長く続いた不妊治療経験など、人生の壁にぶつかったことをきっかけに、金融業界未経験ながら5年間猛勉強してFPの資格を取得。“今より幸せで円満な家庭づくりのお手伝い”をモットーとし、娘として、妻として、母として、そして専門家として広い視野をもち、親子や夫婦でも話題にしづらい「お金のハナシ」に向き合うきっかけを提供しています。プライベートでは一児の母。文/和兎 尊美
※文中のコメントは「たまひよ」アプリユーザーから集めた体験談を再編集したものです。
※調査は2024年10月実施の「まいにちのたまひよ」アプリユーザーに実施ししたものです。(有効回答数78人)
※記事の内容は2024年12月の情報で、現在と異なる場合があります。続きを読む - 記事一覧に戻る