4人目を出産後、網膜剥離に。「明日は、何があるかわからない!」と開業を決意

はるるさんが、産前・産後のケアなどを行うHaruru助産院を開業したのは、4人目が生まれてすぐのこと。網膜剥離(もうまくはくり)になり、開業の夢を急いで実現しました。
――4人の子どもがいて、はるるさんはどのようにして助産師を続けてきたのでしょうか。働き方を教えてください。
はるる 私は、子どもが生まれるたびに、そのときの状況に合わせて働き方を変えています。
長男が生まれるまでは、総合病院の産婦人科で働いていましたが、産後は夜勤ができないので退職して、こども園で看護師として働きました。子どもが好きだから、こども園で働くのもいいな~と思ったんです。
双子が生まれたときは、長男と双子が同じ保育園に入園できませんでした。別々の保育園に送迎するのは現実的に無理だったので、双子が幼稚園に入園する3歳まで専業主婦をしました。
助産院を開業したのは、4人目が生後3カ月になったときです。
――生後3カ月で開業は、早いように感じますが。
はるる 開業を急いだのには理由がありました。4人目が新生児のころ、一緒にお昼寝をしていたんです。目が覚めたら、突然私の左目の下半分が見えないんです。視野が欠損しているんです。とても驚きましたが、ただ事ではないと思い、私の母に連絡をして子どもを預けて、急いで眼科に行きました。眼科では「網膜剥離(もうまくはくり)」と診断され「失明の可能性がある」と言われました。すぐに大きな病院に行くように言われて、夫の父に車を運転してもらい、紹介された大きな病院に行ってすぐに入院、手術となりました。
手術は成功して、視野も回復したのですが、この経験から「人生は明日何があるかわからない! 夢は早く実現しないと!」と強く思うようになりました。本当は、第4子が10歳になったころに助産院を開業しようと考えていましたが、早いほうがいいと思って、第4子が生後3カ月になった11月3日、いいお産の日に助産院を開業しました。
SNSではなく、困ったときに頼れる場所を3カ所以上見つけて

Haruru助産院では、個別相談でママの育児の悩みなどにも答えています。
――Haruru助産院の個別相談について教えてください。どのような相談が多いのでしょうか。
はるる ママからの相談で多いのは「母乳を飲んでもすぐに泣く」「飲んでくれない」などの授乳に関することです。ほかには「〇カ月になったのに、〇〇ができない」など発達に関する相談や、離乳食に関する相談も多いです。
ママたちと話していると、SNSの情報に振り回されて不安になって、相談にくるケースが多いように思います。
――たとえばどのようなことでしょうか。
はるる たとえば「SNSで見た子は生後5カ月で寝返りをしているのに、うちの子は5カ月なのに、まだ寝返りをしないんです。大丈夫ですか?」と相談されたこともあります。
でも赤ちゃんをうつぶせにしてよく見てみると、首をしっかり上げるんです。そのためママには「発達には個人差があるので、月齢だけを見ないで。赤ちゃんは首をしっかり上げているから、もう少しで寝返りをすると思いますよ」と伝えました。そうしたらママも安心していました。
離乳食も「SNSで見た子は、同じ月齢で〇〇を食べるのに、うちの子は食べないんです」と相談されたこともあります。
ママには「赤ちゃんだって食の好みはあるし、食べたくない気分のときもありますよ。ママだって、嫌いなものがあったり、今は食べたくないと思うこともあるでしょう? 赤ちゃんも同じだから、SNSの子と比べなくて大丈夫!」と伝えました。
――SNSの情報に振り回されてしまうのはなぜでしょうか。
はるる 1つは核家族化が進み、赤ちゃんが身近にいないためにSNSでしか情報が得られないママ・パパが増えているのだと思います。
また今のママ・パパは、リサーチが得意な分、かえって育児不安が高まりやすい傾向があります。子育てにおいては、SNSの利用は悪循環を招くことがあるということを知っておいてほしいと思います。
――はるるさんは、ママ・パパたちに先輩ママとして自身の経験を伝えたり、アドバイスすることもありますか?
はるる 離乳食をあまり食べてくれないという悩みがあるママが、離乳食のときに大きな食事用エプロンを赤ちゃんにつけていたことがあります。ママに「赤ちゃんからすると、じゃまだと感じているかも・・・。汚れてもいい服を着せて離乳食をあげてもいいよ。私も、そうしてたよ」と伝えたこともあります。
また「完全母乳でないとダメですか?」と相談されたときは、「うちは双子の女の子は完全母乳で、男の子のほうは混合栄養だったけど、どちらの子も元気に育っているよ」と伝えたりしています。
――ほかに個別相談では、どのようなことを伝えていますか。
はるる ママ・パパには困ったとき頼れる場所を3カ所以上見つけてほしいと言っています。
「困ったとき頼れる場所は実家だけ」と言うママ・パパもいますが、たとえば「実家に頼ろうとしたら、親の具合が悪くて頼れない」ということもあり得ます。そういうときに困らないように、頼れる場所は3カ所以上見つけておきましょう。
お隣さんでもいいですし、ママ友だちでもいいです。子育て支援センターなども含めて、ママ・パパが気兼ねなく頼れる人・場所を見つけてください。SNSだけではなく、いろいろな人とかかわって子育てをしてほしいと思います。
お話・写真提供/伊藤はるるさん 取材・文/麻生珠恵、たまひよONLINE編集部