あやしい情報に惑わされず、信頼度の高い情報をもとに楽しく子育てをしてほしい

――最近は実名でSNS等を使って正しい情報を発信する医療従事者の方も増えているようですが、いまだに間違った情報を鵜呑みにする人も多いです。
宋 産科・婦人科に限ったことではないですが、ニュースになるとどうしても一方的な発信のしかたをされてしまいます。そして、そのニュースを見た人も安易に信じてしまう傾向にあるので、もう少し専門家の意見の深堀をして確認してほしいなと思います。
――先生は朝や夕方のニュース番組にも専門家として出演されていますが、今後も機会は増えていきそうですか?
宋 テレビ離れが加速していますが、それでもテレビでの発信は大きいと思います。自分が出演しているときに専門分野の解説が必要なときはもちろんしっかり解説しますし、VTR出演で正確な情報を伝えることもできます。ですから、正しい情報を伝えるということにおいて、今度もメディアとは連携していければいいなと思っています。多くの産婦人科医が抱える課題ですが、診察に来てくれた人には正しい情報を伝えていきます。しかしそれでは間に合いません。産婦人科に来る前の段階の人に情報を伝えたい、来院してからも「こんな選択肢もあるよ」と提示することで一緒に問題に取り組むことができます。
――先生はこれまでの活動の集大成として、新しいメディア「Crumii」の立ち上げを考えているそうですが、どんなプロジェクトか教えてください。
宋 「CREATE」と「YOU&ME」という言葉から「Crumii」と名づけました。正しい情報を伝えたいという思いが大前提ですが、女性にまつわることや、産婦人科にかかわりのある問題について企画段階から医師が関与しているメディアがあるといいなと思い、立ち上げることにしました。
法律や制度についても解像度を上げた、よりわかりやすい内容を女性に伝えたいというコンセプトです。それぞれの事象や社会問題など、多くの女性が「これはどういうこと?」というような内容を深堀していくメディアをめざしたいと考えています。
――既存の女性の健康をうたっているメディアとの違いはどんなところですか?
宋 一番の特徴は、産婦人科医と女性をつなぐプラットフォームであるということです。一方的にこちらから情報を発信するのではなく、読者と一緒に作っていくメディアであることも特徴です。たとえば、病気の症状や治療法などは医師から発信し、実際にかかった患者さんの声も知れる、そして不安に思っている人の声もコメントから共有できるようになっているので、ひとつのことを多方面から知れるようなしくみになっています。
生理のことや更年期、診察時の悩みなど、ささいな悩みも検索できるようなしくみになっているので、産婦人科医に質問しているような気持ちで頼ってもらえるようなメディアになるといいなと思っています。そして、産婦人科にかかることにハードルが高いと感じていた人が、安心してかかることができる産婦人科の情報も知れます。女性の健康に関しては多くの選択肢があるということ、もっと主体的で健康的に生きられるということを知ってもらえたらうれしいです。
――最後に「たまひよONLINE」の読者にメッセージをお願いします。
宋 妊娠から子育て中まであらゆる情報であふれているので、その中からベストな情報を集めることは大変です。情報の取捨選択が難しくなってきていますが、あやしい情報に惑わされず、信頼度の高い情報をもとに楽しく子育てをしてほしいなと思います。子育て中のお母さんには、頑張りすぎるお母さんが多い印象です。でも、だいたいで大丈夫です。失敗することがあって当たり前なので、もっと肩の荷をおろして楽しんでほしいなと思います。
お話・写真提供/宋美玄先生 取材・文/安田ナナ、たまひよONLINE編集部
宋先生自信の子育ての悩みから、産婦人科医として現在の日本の医療の問題まで、幅広く話しを聞くことができました。信頼のおける医師の存在は私たちにとって心強いと感じました。宋先生は、女性のための新しい医療メディアのためのクラウドファンディングを実施中です。
宋美玄先生(そん・みひょん)

PROFILE
産婦人科医。丸の内の森レディースクリニック院長。1976年生まれ。兵庫県出身。
2001年に医師免許を取得し、周産期医療、女性医療に従事するかたわら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中。
●記事の内容は2025年3月の情報で、現在と異なる場合があります。